2016.12.03(Sat) @ 岩手 COUNTER ACTION MIYAKO
Open 17:00 . Start 18:00 / Guest band: GOOD4NOTHING
Info: (問)ノースロードミュージック TEL:022-256-1000 http://www.north-road.co.jp/
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Open 18:00 . Start 19:00 / Guest band: 04 Limited Sazabys
Info: (問) FOB企画 TEL:025-229-5000 http://www.fobkikaku.co.jp/
※小学生以下チケット無料(要保護者同伴) ※入場時にドリンク代として別途500円が必要
受付期間 10月05日(水) 12:00~10月17日(月) 12:00
受付期間 11月01日(火) 12:00~11月07日(月) 12:00
-- 今の皆さんが「ANOTHER STARTING LINE」と発することにすごく大きな意味があるし、この歌詞もリスナーそれぞれに当てはまると同時に、お三方の歌でもあるわけですもんね。そんな楽曲が、2016年10月というタイミングに発表されることにも大きな意味があるなと。
難波 そうですね。これはみんなの歌、みんなのストーリーなんですよ。
横山 歌詞には載ってないけど、それを汲むぜってことだよね。「1人ひとりと話はできないけど、わかってるぜ。俺たちだってそうだぜ!」って。
難波 そうだね。
横山 だから、今の自分たちをよく表せた、新しいHi-STANDARDを自分たちで祝うっていう意味では一番いいなと。
-- この曲はMVも制作されますが、MV自体も『MAKING THE ROAD』のとき以来ですもんね。
横山 そうなんですよ。でも実は『MAKING THE ROAD』のときはライブ映像とかオフショットを集めてMVにしたので、ちゃんとした撮影は正確には(『ANGRY FIST』収録の)「THE SOUND OF SECRET MINDS」以来らしくて。
難波 3人で撮るのは19年ぶりだそうです(笑)。
-- 19年て(苦笑)。時空が歪みますね。
横山 歪みますよ、そりゃ。欅坂46の子とか生まれてないですからね(笑)。
-- 新曲としても、そもそも16年ぶりですものね。
横山 リリースは16年ぶりですけど、制作は17年ぶりなんですよね。16年、17年、19年とか、自分たちでも訳わかんないですよ(笑)。
難波 でも、この感じはめちゃめちゃ新しいっすよね。
-- 日本のどの再結成バンドとも違いますし、海外を見渡しても同じようなケースって見当たらないですもんね。
難波 そこなんですよ。だからこそ、これから胸張ってメッセージを伝えられるというか。いろいろ別れがあるかもしれないけど、でも大丈夫だよ、全部つながっていくんだよって思ってもらいたいですね。
-- そのシングルが10月5日(水)に発売。前日の4日(火)に店頭に並ぶことで、ようやくその事実が世に知れ渡るわけじゃないですか。このインタビューの時点では誰ひとりとして知らないわけですもんね。
横山 そう、知らないんですよね(笑)。
-- この感じもハイスタらしくて、なんだか懐かしいというか。90年代には『I DON'T NEED TROUBLE BECAUSE OF…MONEY』や『WAR IS OVER』といった7インチEPを告知なし、店頭のみで限定リリースしたことがありましたよね。当時、レコードショップに足しげく通っていた人はそれに気づいて、いち早く手に入れることができたという喜びがありましたけど、今回はそれとも趣旨が異なりますよね?
横山 そうですね。確かに情景としてはあのEPが浮かんだんですよ。あの頃はそれこそネットもなかったしWEB通販もなかった、みんな情報はお店に行って仕入れてたじゃないですか。で、見つけたら買って、そこから口コミで広まっていく。「わぁ、ハイスタがこんなことやってるよ」っていうことを楽しんでいたというか、それがプレゼントでもあったんですけど、今は時代が違うからそれが通用しないというのもわかるんですよ。僕もよくネットや通販を利用するので否定するつもりはないんですけど、ただこれだけ便利になった世の中でどこまで面白みとして発揮できるのかなというのは狙いというか。僕たちの遊び心としか言えないですね。
難波 あと、音って物質として手に取ることはできないじゃないですか。そんな中でパッケージというのは俺たちのいろんなことの結晶なんですよ。特に今回の作品は手に取ってもらいたいという思いが強いから、こういうやり方になったのかな。
横山 やっぱり俺たち、男なんだよね。俺たちには女の人の“イク”っていうのはわかんないじゃないですか。でも男の人の“イク”っていうのは、明らかに精子を出すことで理解できる。そう、つまり俺たち精子を出したかったんですよ……ん、なんだこれ(笑)。
恒岡 (笑)。
難波 つまり俺たちの精子を手に取ってもらいたかったんですよ(笑)。手に乗せてもらいたいんですよ(笑)。
横山 難ちゃんが乗っかっちゃったよ(笑)。
難波 そこはバーチャルじゃ気が済まなかったんですよね。ハイスタって特に口コミや人とのつながりを大事にしていたので、もう一回それを確認したかったというのがあったんですよ。
横山 そう、口コミ。今の世の中の口コミってどういうものなんだろうっていうのをね。
難波 もちろんネットやSNSを使うんでしょうけど、Hi-STANDARDを必要としてくれる人たちと、そこでもう一回つながりたかったんです。
-- でも最近は情報過多というか、そういった情報を得ただけで満足してしまう人も多いですよね。
難波 「ニュース見た、YouTube見たぞ」で終わっちゃうみたいな。
-- でも今回のケースだとその事前情報がないぶん、店頭で最初に知って興奮する。そこからパッケージを手に取って聴いてみようと思うんじゃないかなという気がしているんです。
難波 そう思ってくれる人がいると嬉しいな。でも「CD出たな。ハイスタか、聴いてみようかな」みたいに、もっとライトな感じでも全然いいんですけどね。しかも前回のDVDもそうでしたけど、ハイスタの新しい作品、俺たちの結晶がPIZZA OF DEATHからまたリリースされるってことは、実は本当にすごいことなんですよ。それがどういうことなのか、イメージしてほしいなと思います。
横山 僕たち、昨日スタジオで練習してたんですけど、「この結果はどうなるのかな?」って話をしていて。もちろん話題にもなりたいし、みんなが手に取ってくれたらいいなとは思うけど、負ける予想もしてますからね(笑)。
恒岡 心のケアを先にしとかないとね(笑)。
難波 まぁでも、音は届くんだよ、やっぱり。
横山 うん。だから……このインタビューを読んだ人は、ぜひ友達にも教えてあげてほしい。そこから先はもう口コミなんで。TwitterでもFacebookでも電話でもいいし。ちょっと申し訳ないのが、昔リアルタイムでHi-STANDARDのファンだった人ってもうお父さんお母さんになっていて、CDどころじゃない人、CD屋に1時間かけて行ってる暇がない人もいるんですよね。そういう人は誰かに頼んで買ってもらって、送ってもらったらどうかなと。これ、1案です。
難波 そこでまた、昔の仲間と「元気? ハイスタの新しいの、出てるぜ?」ってコミュニケーションも取れて、ストーリーがひとつ生まれるしね。
-- また新たな関係も築けるわけですね。
難波 今回のリリースを通して、いろんなことを思い出してほしいな。
横山 自分で言うのはなんですけど、これってちっちゃいバンドじゃできないんですよ。しかも今の、このタイミングにしかできないことだと思うんです。
難波 さっき健くんが言ったけど、どういう結果でもぶっちゃけいいっちゃあいいんですよ。ハイスタって最初の頃から言ってたのは、目の前に5人しかお客がいない、しかも友達しかいないという状況でもそれでいいんだ、そいつらが喜べばいいんだってこと。で、この音が、この作品が聴いた人の心の糧となって、「よし、行くぜ!」と思ってくれるのが本当にたった1人だけでもいいしし。ぶっちゃけ、喜ぶのが自分の息子だけでもいいし(笑)。でも、これが広まっていってくれるなら、それに越したことはないよね。
-- 僕は90年代のハイスタをリアルタイムで体験してない世代が、初めて触れるハイスタの新作がこのシングルだという事実が、すごくうらやましいし、めちゃめちゃ幸せだなと思うんですよ。
横山 なるほどなぁ。
難波 でもどうせなら、年代とか世代とかすら超えたいですね。同じ生きる者として「俺たち、こういう世代を生きてきたからこうなんだぜ?」というつもりも、まったくないし。そこを受け入れてくれたら嬉しいです。
横山 あとは本当に、聴く人の感性にお任せするしかないですよ。だって、僕たちを映像で見たって、薄汚い3人の田吾作だもんね(笑)。
難波 自分の感覚では「俺たち最強!」と思ってますけど、その感覚が若い子たちにとって最強じゃなかったとしたら、ギャップがあったんだなってことじゃないですか。それはそれで仕方ないけど、できることならブチかましたいな。
横山 こうやって活動している以上、絶対に誰か若い子には響いてくれるんじゃないかという希望だけは捨てたくないですね。
-- で、2016年のHi-STANDARDは12月23日の『AIR JAM 2016』に向けて、他にもいろいろ動きがあるわけですよね。12月7日にはカバーシングル発売も控えていて、さらには東北ライブハウスツアーも決定している。このツアーに歓喜する人は相当いると思いますよ。
難波 そうですよね。本数は多くないけど、今から楽しみで楽しみで。
横山 ツアーはヤバいね! ツネちゃんが「ハイスタやるんだったら、絶対に東北は行きたい」と前から言ってたしね。
恒岡 うん。ライブハウスでやりたかったんです。2011年、2012年と『AIR JAM』をやったけど、いわゆるライブハウス規模の会場ではやっていなかったので。
横山 パワストでZepp Sapporoでやらせてもらったぐらい。Zeppといったらライブハウスで一番大きいわけだからね。
難波 ハイスタが2000年まで活動していたときは、そのクラスの会場はあまりなかったし。
横山 赤坂BLITZとクラブチッタとAXと……Zeppはもうあったっけ?
恒岡 一回、生中継したよね。
横山 ……と、ちょっとした思い出話になっちゃいましたね(笑)。
恒岡 スタジオでは大体こういう話ばかりしています(笑)。
横山 これで4時間ぐらいね(笑)。
難波 とにかく、僕たちは東北のことを忘れてないですから。それをこのツアーで伝えたいです。
-- そして『AIR JAM 2016』ですが、今回は過去2回とも違ったバラエティ豊かなメンツになりましたね。以前の『AIR JAM』を踏襲するんじゃなくて、新しい、今のハイスタだからこそのラインナップな気がします。
難波 ここも今の『AIR JAM』を作るというのがテーマですね。
-- 健さんがコラムにも書いてましたけど(参考:http://www.pizzaofdeath.com/column/ken/2016/06/vol94.html)、地震とは関係なく偶然福岡を選んだんですよね。
難波 そう。これもドラマだよねぇ。
横山 すごいなと思います、このタイミングに。
難波 順番としては逆だったんですけど、でも九州に元気になってもらいたいという思いには変わりないので、届けたいですね。
恒岡 去年のライブ3本をやる前に決めたんだっけ。あれ、途中?
横山 えっと……やろうって話したのはもっと前だけど、本格的に「これ、できるんじゃない?」ってなったのは、あの3本をやってからだよね。じゃあそれまでにレコーディングして……。
恒岡 新曲を持ってやろうよと。
-- 「新曲があるハイスタのライブ」、本当に楽しみです。
難波 僕らも楽しみなので、みんな歌えるぐらい聴き込んできてほしいですね。
-- ここまで動くとなると、2017年がどうなるのかも気になるわけです。もちろん皆さんそれぞれの活動もあるので、そことうまく調整しつつということになると思いますが。
難波 そういう意味では、さらに新しくなるんじゃないですかね。この活動の仕方が今のハイスタ。20代、30代のときとはまたちょっと違う感じになると思います。
-- 逆にこのスタンスだからこそ、皆さんが楽しみながら活動できるというのもあるでしょうし。
難波 それは間違いないと思います。特に健くんはそこをすごく意識してきたじゃないですか。Ken Bandとして自分たちが継続してきた世界がHi-STANDARDが始まることでどうなるんだろうかと、すごく意識して発信してきた。でもこないだ健くんがライブで「Hi-STANDARDが自分の中で存在することが100% OKになった」と言ったっていうのを聞いて、ああ融合できたんだな、自分の中で整理がついたんだなと思ったんですよ。
横山 僕たちが2011年にまた集まり始めたとき、気持ちの中でハイスタをどこに置けばいいのかっていうのはすごく悩みました。特に僕と難ちゃんはバンドを持っていて、自分でメンバーを集めて始めたぶんの責任があるじゃないですか。そことハイスタをどう棲み分けしようかと。それぞれのバンドはもちろん一生懸命やるとして、その上にHi-STANDARDっていう別の生き物みたいなものを作れないかっていう話を難ちゃんとよくしてたんです。
難波 運命共同体ね。
横山 そう。かつてはHi-STANDARDが100%を注ぐ場所であって、ハイスタ以外にはそういうバンドはなかった。でも今はそれがKen BandだったりNAMBA69だったりして、そのスタンスを変えずにハイスタの在り方をどう捉えようかって話してたんだよね。それが5年かけてようやく実現したなっていう気がするんですよ。
難波 これからも模索するんでしょうけど、とにかく今は “ANOTHER STARTING LINE”って感じですね。
横山 間違いないです。それにしても、僕たちは今しゃべってることを、数年間しゃべれずにいたわけでね。ずっと黙ってなきゃいけなかったから、やっとこうやって吐き出せるわけですよ。
恒岡 俺は「本当に出るんだ」っていう実感が、このインタビューが始まる前より今のほうが強まりましたね。さまざまな感情が沸々と。
難波 普通はMVを作ります、雑誌でインタビューを受けますってやるわけじゃないですか。でも今回の僕たちは音が優先。それって僕たちにとって一番のプロモーションなわけですよ。「これが今の僕たちの音です」って。そこを最優先できるのってシブいなって思うよね。
横山 シブいね、パンクロックだね。事前の仕込み……まあ、情報が出ないようには仕込みましたけども(笑)、何をセットアップしてどういう露出をしてというのが一切ないですからね。このインタビューとMVを撮るだけですから(笑)。
恒岡 それこそが、今回のタイミングでしかできないことだしね。大袈裟に言ったらチャレンジなのかもしれないし。
難波 音以外のことで一切判断させないわけですからね。これが2016年のHi-STANDARDなんだなと思います。
INTERVIEW BY 西廣智一
2016年10月4日(火)、突然CDショップ店頭に並んだHi-STANDARD 16年ぶりとなるニューシングル『ANOTHER STARTING LINE』。90年代にハイスタをリアルタイムで体験した世代はもちろんのこと、ハイスタのことを後追いで知った若い世代までをも巻き込んだあの衝撃的な1日のことは、今でも鮮明に覚えていることだろう。彼らはWEB通販なし、店頭販売のみでキャリア初のオリコンチャート1位を獲得するという快挙を成し遂げた。続く2週目、3週目もトップ10入りを記録。そんな好セールスの中、いよいよ本日からはWEB通販およびデジタルリリースがスタートする。
もちろんチャート1位という結果がすべてではない。あくまで「ハイスタが新曲をリリースした(しかも今回のような手法で突如発表した)」という事実こそが我々ロックファン、パンクファンにとっては一大事なのだ。久々の新作リリースに関して難波章浩、横山健、恒岡章の3人はなぜこのような手段を取ったのか。WEB通販やデジタル配信の開始を目前に控えたこのタイミングに、改めて彼ら自身の言葉で説明されたインタビューをここに公開する。
以下は9月某日、「ANOTHER STARTING LINE」のMV撮影時に収録されたもので、今回のシングルリリースに際して唯一のインタビューとなる。
-- まず最初に……とにかく驚きました(笑)。
全員 (笑)。
-- 間違いなく、多くの音楽ファンがびっくりしていると思うんです。
横山 ですよね。
難波 いろんな意味でね。
-- いろんな意味で驚きますよね。Hi-STANDARDがニューシングルをリリースするという事実もそうですけど、このリリースに関する情報の出し方、販売方法含め、とにかく突っ込みたいポイントが多いんですよ。
全員 (笑)。
-- その前に、ここまでの流れをおさらいさせてください。前回皆さんにお話を聞いたのは、2013年9月のライブDVD『Live at TOHOKU AIR JAM 2012』リリースのタイミング(参考:http://natalie.mu/music/pp/histandard02)で、あれからまる3年経つんですよ。あのインタビューの最後に僕、「来年2014年でCDデビュー20周年を迎えるんですよ。20周年ということで来年は何か動きはないんですか?」と質問したんですけど、「そういうのが似合わないんですよ、ハイスタって」という答えが返ってきまして。
難波 それ、誰が言ったんですか?
-- えっ、難波さんですよ?(笑)
全員 あははははは!(笑)
難波 マジっすか!(笑)
横山 さすが。それ、フリだったのね(笑)。
-- で、その2014年はHi-STANDARDとしての活動が一切なかったじゃないですか。翌2015年11〜12月には3本のライブ(11月14日の『尽未来際 〜尽未来祭〜』、11月23日のFat Wreck Chords 25周年記念イベント『FAT WRECKED FOR 25 YEARS』、12月6日のライブイベント『POWER STOCK 2015 in ZEPP SAPPORO』)がありましたけど、その間も皆さんスタジオに入って音を出したりはしてたわけですよね?
横山 ずっとしてましたよ。確かに2014年はあんまりやってなかったような気がしますけど、『AIR JAM 2012』が終わった後もスタジオに入って集まってたし。音出さなくてもしゃべってたりとか(笑)、そんなのはずっと続けていて、少しずつ……話は少し前後しちゃうけど、『AIR JAM 2011』で僕たち急にバンドに戻ろうとして、3人が物理的にその場にはいてステージができてたけど、バンドの体はなしてなかったと思うんですよ。で、そこからまた3人でバンドになろうという作業をしたと思うんですよね。90年代と同じ形には戻れないけど、新しい自分たちのあり方を探ろうと、スタジオを予約して集まって、ちょこっと古い曲を演奏することで少しずつ戻っていったような気がするんです。
難波 去年のライブ3本でそこはものすごく感じましたね、「戻る」んじゃなくて「前に進もう」みたいなところは。「新しいHi-STANDARD」というのはそこで感じました。
横山・恒岡 うん。
-- 確かに2011年のステージというのは、以前のHi-STANDARDを皆さんの中で意識しながらそこに寄せていくというか、3人の中で再確認している感じがあったのかなと、外から見て感じていました。
横山 うん、そうですね。まさに僕なんかはよくそんなことを考えていて。集まる意味は「震災が起きたから集まる」、それで十分なんですけども、やっぱり時間が空いたから新しい関係性を構築しなくちゃいけないというのは頭にあったんです。しかも、すでにそれぞれ別にやっていることがあったし、家族もいたりもしますし。活動がストップした頃とは何もかもが変わっていて、「ただ集まればいいじゃん」じゃ済まないんですよね。それをすごく考えてましたね。もちろん僕だけじゃなくて、2人とも考えていたと思うし。
-- じゃあ『AIR JAM 2012』以降、2015年末まで表向きにはブランクがありましたけど、その期間は皆さんの中で今の関係、今の3人のバランスというものを改めて作るための時間だったと。
難波 そうですね。
横山 僕はまさにそう思ってますね。
恒岡 実際各々そういうふうに、いろいろ距離感を考えながらだったとは思うんですけど、2015年のときは本当に自然な形で臨めたんじゃないかな。ケニー(横山)がコラムにも書いたライブをやるきっかけというのも、必然というか自然な形だったし。そうやって動き出したら、次は「新曲をやりたいよね」って話にもなるし、すべてが自然に流れていった感じですね。
難波 2011年のときによく「復活した」と言われたじゃないですか。でも自分たちの中では復活ということではなくて、「震災がもたらした暗いムードを俺たちが払拭できるんだったらやろうよ」っていうことだったのかなって思うんです。でも2012年のときは単純に楽しめた。思えばあそこから始まってたのかな。
横山 うん、そうだね。
難波 本当に3人で会ってなくてコミュニケーションを取ってない時期があったから、そういう時間を2012年以降の3年間で取り戻したというか。スタジオに入って、音鳴らさないでしゃべってるだけでも楽しかったですし。それがあって、去年のライブ3本に向かったんですよ。
-- そうやってバンドとして自然な形で動いてきたから、ツネさんが言うように流れで新曲もできたと。
横山 そうですね。実は2012年の『AIR JAM』以降、スタジオで新曲作りにトライしたこともあったんです。でも、それは失敗したんですよ。いくつかボツになったよね?
難波 うん。
横山 やっぱり急にはできなくて。よく他のミュージシャンを見ていると「なんでこんなことに、こんなに時間がかかるんだろう?」っていう活動をしている人、いますよね? でも、いざ自分たちがそういう立場になってみると「ああ、本当に時間かかるんだな」って思いましたね(笑)。お互いハイスタに対してどういうものを求めているのか三者三様であるだろうし、どういったところに向かうべきかのビジョンも三者三様だろうし、それを無言で擦り合せる時間が必要だったんです。
難波 音を合わせて、まずは心が通っていかないと曲にはならない。ただ前の曲をやってりゃいいってわけじゃなくて、その時間は必要だったんですかね。だからみんな「なんで2013年は何もやらなかったの? 『AIR JAM』やらないの? なんでそこで止まるの?」と思ってたと思うんですよ。止まってたわけじゃなくて表立っては活動してなかっただけで、俺たちの中では沸々と始まってたんです。
横山 そう。活動を期待されちゃうから何も公表もアナウンスもできなかったけど、本当に新曲は作ってました(笑)。
難波 で、Fatと尽未来際とパワストと、本当にあそこでタイミングが合ったから3本やって。あのブッキングもちょっと奇跡的だったんですけどね。まずFatからオファーがあったんだっけ?
横山 いっちゃん最初は尽未来際。で、その直後にFatから話があって。そこから「2本だけやるんだったら、俺たち札幌で活動をストップしたはずだから、札幌にも戻ろう!」って話になって。それで(SLANGの)KOちゃんに「出させて!」と連絡したんです。
難波 その前の3年があったからか何なのかわからないけど、2011年とも2012年ともまた全然違って、めっちゃヤバかったし、めっちゃ楽しかったし。
横山 ここでちょっとぶっちゃけ話。2012年までは僕たちは『MAKING THE ROAD』と『Love Is A Battlefield』で止まってたんですね。10数年前の曲を演奏するだけのバンドと言ったら自分たちのことを低く見すぎかもしれないけども、それを期待されてるし、それをやるべきだった。でも2015年の3本のとき、僕たちの手元には、人には話してなかったけど新曲が1つ2つあって、とにかく動いてる実感があったんです。「俺たちやってるよ?」っていう自信があったから、現役のバンドに負けるつもりはひとつもなかったですね。
難波 そう! 特に尽未来際のときやパワストのときはそうだったけど、結構「ハイスタ出てくんだったら、やってやるぞ!」みたいなムードがあったんですよ、みんな。
横山 みんな狙ってたと思う。
難波 ぶっちゃけ言うと、後輩バンドが「俺たちがこの10年やってきたことをぶつけて、ハイスタ負かしてやんぞ!」みたいな感じで来てるなっていうのが、すごくわかったんですよ。でも、絶対に負けねえと思ってた(笑)。
横山 うん(笑)。だって、立場が逆だったら絶対にそう思うもんね。先輩のバンドがいて、そのバンドが10年ぐらい止まってたら急に活動再開して、でも何年かに1回しかライブしない。そりゃぶっ潰すチャンスだと思いますよ。でも、俺らには密かに新曲が用意されていて、動けてる実感があったので、やる前からどこに負ける気はしなかったんです。
難波 そこで俺は「ハイスタってやっぱりすげえなぁ」と思ったね(笑)。
横山・恒岡 ふふふふふふ(笑)。
難波 北海道でパワストの打ち上げと、その後にツネちゃんと寿司食いに行ったんですけど、あれは忘れらんないっすね。
横山 あれ、俺それ誘われてないよ?
恒岡 あ、違う違う! 帰りの空港の話。健くんはそのまま札幌に残ったから(笑)。
横山 ああ、そっかそっか!(笑)よかった〜、あっぶねぇ〜。焦った焦った(笑)。
難波 まぁそこからっすよね(笑)。さらに「やってやろう!」と思って、曲作りも加速したし。
横山 あれをやったことで僕たちもノレたし、実際手元にいくつかあった新曲をちゃんと形にしようと、あのときに思えましたしね。
-- 実際、ニューシングル『ANOTHER STARTING LINE』に収録された新曲4曲を聴いたとき、まず最初に「あ、ハイスタだ」と単純に思ったんですよ。
難波 そうなんですよね、それわかります。
-- と同時に、「新しいな」とも思いまして。バンドとして過去を引き継いでいるというよりも、前を見て新たに始めた感のほうが強い気がして、それがどの曲からも伝わってくるんですよね。
難波 それはあると思いますね。さっきも話したように、今のハイスタを作ってきたわけだから、絶対に今の自分たちが出ると思うんですよね。レコーディングしたとき、俺も思ったんですよ。「あ、いきなりハイスタだ」って。
横山・恒岡 (笑)。
難波 そこでまたすごいなと思ったんですよ。俺もKen Bandを見てるし、NAMBA69を見てるし、ツネちゃんの活動も見ている。だけどこの3人で合わせると、いきなりハイスタになっちゃうんだなって。
横山 びっくりするよね、やってる本人たちも。3人のケミストリーというのかな。
難波 オリジナリティ、ハンパねえなと思いました。レコーディングには(『GROWING UP』や『ANGRY FIST』を手がけた)ライアン・グリーンに来てもらったんですけど、出てる音はやっぱり今のものなんですよね。
-- メンバー3人とライアン・グリーンという、初期のハイスタを作り上げた人たちが揃って制作したのに、懐メロ的な内容にはならなかったと。
横山 チームに新しい人間も入ってきてますしね。難ちゃんの言ってることの繰り返しになっちゃいますけど、今のハイスタがやっと形になってきたんだなという実感はありましたし、それは当然音にも出ますよね。
恒岡 これはスタジオでもよくみんなで話してたことなんですけど、「90年代と同じようなことをする必要はまったくないよね。今のHi-STANDARDでやりたいことをやればいいんじゃない」って。だから、それがストレートに出ることによって「あ、ハイスタだ」とも「新しい」とも思ってくれる人がたくさんいたら、一番嬉しいですよね。
難波 自分たちがやりたいことをやればよくて、それが「これハイスタじゃないじゃん」とか「変わったね」とかガッカリされても別にいいじゃんと。
恒岡 今この3人で出してる音に、この3人が納得できればそれでいいんです。
難波 うん。と同時に、自分たちがすべてを賭けて録った作品なので、「ガッカリされるわけない」という自信もあったし。
横山 ネガティブな話になりますけど、「こんなのハイスタじゃない」と思う人は一定数いると思うんですよ。でもそれはそれでいいんですよね。そのぶん僕たちは新しいものを得にいけばいいだけの話で。だって、あんなに強烈な活動をしていて、あれだけみんなの生活や思い出に入り込んだ楽曲を送り出したバンドなんだから、新しい楽曲を出されたら、そりゃちょっと戸惑う人もいますよ。でも僕たちはバンドとしてこのHi-STANDARDを続けたいんだったら、新曲は絶対に必要なんです。
難波 で、やるからには聴く人をビビらせたかった。2011年、2012年と僕らは東北に向けてライブをやったけど、日本中はもちろん、世界中にハイスタのファンはいるわけで、そういう人たちにこの音を届けたかったというのはあります。だからこそ、とてつもないものを作りたかったんです。
-- 固定概念じゃないですけど、外から見てる人による「ハイスタらしさ」って限られた楽曲のイメージだと思うんです。この4曲はそういう「ハイスタらしさ」から少しずれるのかもしれないけど、でも紛れもなくハイスタの楽曲なんですよね。
横山 そうですね。「ハイスタらしさ」って話で言えば、僕たちにもそういう部分はあったんですよ。新しいことをやると、どうしても古いほうが良く感じてしまうというか。でもそこを僕たちは作る側だから、突破していかなければならない。それも時間がかかった要因のひとつではありましたね。
-- それと、今作でもうひとつ印象的だったのは歌詞。すごくエモかったです。
難波 確かにエモいっすよね。
-- 皆さんが30代に突入するぐらいでバンドの活動が一度止まったわけじゃないですか。そこから10数年を経た今、Hi-STANDARDというパンクバンドが40代半ばに突入して何を歌うのかというのもすごく気になっていたんです。今のハイスタにおいて、歌詞を通じてどのようなメッセージを伝えていこうと考えてましたか?
横山 今回は僕と難ちゃんで2曲ずつ歌詞を書いたんですけど、たぶん考えてることは近かったので、意外と何の相談もしてなくて。きっと今こういうことを発したいんだろうなというのは、無言でわかってました。でも2人とも、最初はちょっと固くなってるところがあって。で、僕が「TOUCH YOU」の歌詞をふざけて書いたら、ちょっとほぐれたよね。
難波 ああ、そうかもしれない。確かに最初は固くなってるところはありましたね。そこから、Hi-STANDARDの音を待ってる人たち、受け止めたいと思ってる人たちに「僕らもみんなと同じだよ。今こんな世の中に生きていて、いろんな思いをして、いろんなことを乗り越えてきてるんだよ」ってことを届けたいと思った。でもそれは自分に対しても言ってることなのかもしれない。そういうことを、まずはすごく意識したかもしれないなぁ。
横山 「ANOTHER STARTING LINE」にはそれが全部詰まってると思います。震災からの5年間、いや、その前からかもしれないけど、俺たちがバンド活動をストップさせてからどういう気持ちになって、でもそれがあったからこうして今があるんだよっていうのを。
難波 ある瞬間とてつもなく落ち込んでしまうときもあるけど、ある瞬間には「ここからがスタートだ」と思えるときもある。だからこそ「行こうぜ!」って感じですよね。それは強く伝えたかった。
横山 ちょっと脱線しちゃうけど、Hi-STANDARDが「ANOTHER STARTING LINE」って歌うことって、すごく大きいと思うんですよ。人生そんなに新しいスタートってないですもんね。この歌詞は難ちゃんが書いたんですけど、そこをストレートに、なんのてらいもなく言えたなって気がしますね。
難波 でも僕が書いたとはいえ、やっぱりHi-STANDARDとしてのメッセージなので。ハイスタだからこそ言えることもあるんですよ。東北に行くと毎回思うんですけど、困難を乗り越えて頑張ろうとしている人たちがたくさんいるんです。今年は九州も地震で大変だったし、その他にも自然災害でいろんな場所が大変だったじゃないですか。それだけじゃなくて、家でひとりで大変なことになってる子もいるだろうし。そういう子たちも、この曲を聴いて「よし、自分も新たに一歩踏み出そうかな」とか思ってもらえたらいいなと思って。
横山 中学生高校生でも彼ら彼女らなりにものすごく悩んでいるはずだし、そこで「Hi-STANDARDの人たちってどうやって生きてるんだろう?」と興味を持ってくれたら、もしかしたら若い子に響く答えもあるかもしれないですよね。「ああ、なんか生きてればいいこと、あるんだな」とかね(笑)。
難波 そうそう。「生きてりゃいいことあるんだな、オジさんになっても未来があるんだな」って勇気を与えられたら最高だよね。
Vol.02 に続く...
INTERVIEW BY 西廣智一