2016年10月4日(火)、突然CDショップ店頭に並んだHi-STANDARD 16年ぶりとなるニューシングル『ANOTHER STARTING LINE』。90年代にハイスタをリアルタイムで体験した世代はもちろんのこと、ハイスタのことを後追いで知った若い世代までをも巻き込んだあの衝撃的な1日のことは、今でも鮮明に覚えていることだろう。彼らはWEB通販なし、店頭販売のみでキャリア初のオリコンチャート1位を獲得するという快挙を成し遂げた。続く2週目、3週目もトップ10入りを記録。そんな好セールスの中、いよいよ本日からはWEB通販およびデジタルリリースがスタートする。

もちろんチャート1位という結果がすべてではない。あくまで「ハイスタが新曲をリリースした(しかも今回のような手法で突如発表した)」という事実こそが我々ロックファン、パンクファンにとっては一大事なのだ。久々の新作リリースに関して難波章浩、横山健、恒岡章の3人はなぜこのような手段を取ったのか。WEB通販やデジタル配信の開始を目前に控えたこのタイミングに、改めて彼ら自身の言葉で説明されたインタビューをここに公開する。

以下は9月某日、「ANOTHER STARTING LINE」のMV撮影時に収録されたもので、今回のシングルリリースに際して唯一のインタビューとなる。


-- まず最初に……とにかく驚きました(笑)。

全員 (笑)。

-- 間違いなく、多くの音楽ファンがびっくりしていると思うんです。

横山 ですよね。

難波 いろんな意味でね。

-- いろんな意味で驚きますよね。Hi-STANDARDがニューシングルをリリースするという事実もそうですけど、このリリースに関する情報の出し方、販売方法含め、とにかく突っ込みたいポイントが多いんですよ。

全員 (笑)。

-- その前に、ここまでの流れをおさらいさせてください。前回皆さんにお話を聞いたのは、2013年9月のライブDVD『Live at TOHOKU AIR JAM 2012』リリースのタイミング(参考: http://natalie.mu/music/pp/histandard02)で、あれからまる3年経つんですよ。あのインタビューの最後に僕、「来年2014年でCDデビュー20周年を迎えるんですよ。20周年ということで来年は何か動きはないんですか?」と質問したんですけど、「そういうのが似合わないんですよ、ハイスタって」という答えが返ってきまして。

難波 それ、誰が言ったんですか?

-- えっ、難波さんですよ?(笑)

全員 あははははは!(笑)

難波 マジっすか!(笑)

横山 さすが。それ、フリだったのね(笑)。

-- で、その2014年はHi-STANDARDとしての活動が一切なかったじゃないですか。翌2015年11〜12月には3本のライブ(11月14日の『尽未来際 〜尽未来祭〜』、11月23日のFat Wreck Chords 25周年記念イベント『FAT WRECKED FOR 25 YEARS』、12月6日のライブイベント『POWER STOCK 2015 in ZEPP SAPPORO』)がありましたけど、その間も皆さんスタジオに入って音を出したりはしてたわけですよね?

横山 ずっとしてましたよ。確かに2014年はあんまりやってなかったような気がしますけど、『AIR JAM 2012』が終わった後もスタジオに入って集まってたし。音出さなくてもしゃべってたりとか(笑)、そんなのはずっと続けていて、少しずつ……話は少し前後しちゃうけど、『AIR JAM 2011』で僕たち急にバンドに戻ろうとして、3人が物理的にその場にはいてステージができてたけど、バンドの体はなしてなかったと思うんですよ。で、そこからまた3人でバンドになろうという作業をしたと思うんですよね。90年代と同じ形には戻れないけど、新しい自分たちのあり方を探ろうと、スタジオを予約して集まって、ちょこっと古い曲を演奏することで少しずつ戻っていったような気がするんです。

難波 去年のライブ3本でそこはものすごく感じましたね、「戻る」んじゃなくて「前に進もう」みたいなところは。「新しいHi-STANDARD」というのはそこで感じました。

横山恒岡 うん。

-- 確かに2011年のステージというのは、以前のHi-STANDARDを皆さんの中で意識しながらそこに寄せていくというか、3人の中で再確認している感じがあったのかなと、外から見て感じていました。

横山 うん、そうですね。まさに僕なんかはよくそんなことを考えていて。集まる意味は「震災が起きたから集まる」、それで十分なんですけども、やっぱり時間が空いたから新しい関係性を構築しなくちゃいけないというのは頭にあったんです。しかも、すでにそれぞれ別にやっていることがあったし、家族もいたりもしますし。活動がストップした頃とは何もかもが変わっていて、「ただ集まればいいじゃん」じゃ済まないんですよね。それをすごく考えてましたね。もちろん僕だけじゃなくて、2人とも考えていたと思うし。

-- じゃあ『AIR JAM 2012』以降、2015年末まで表向きにはブランクがありましたけど、その期間は皆さんの中で今の関係、今の3人のバランスというものを改めて作るための時間だったと。

難波 そうですね。

横山 僕はまさにそう思ってますね。

恒岡 実際各々そういうふうに、いろいろ距離感を考えながらだったとは思うんですけど、2015年のときは本当に自然な形で臨めたんじゃないかな。ケニー(横山)がコラムにも書いたライブをやるきっかけというのも、必然というか自然な形だったし。そうやって動き出したら、次は「新曲をやりたいよね」って話にもなるし、すべてが自然に流れていった感じですね。

難波 2011年のときによく「復活した」と言われたじゃないですか。でも自分たちの中では復活ということではなくて、「震災がもたらした暗いムードを俺たちが払拭できるんだったらやろうよ」っていうことだったのかなって思うんです。でも2012年のときは単純に楽しめた。思えばあそこから始まってたのかな。

横山 うん、そうだね。