-- 実際、ニューシングル『ANOTHER STARTING LINE』に収録された新曲4曲を聴いたとき、まず最初に「あ、ハイスタだ」と単純に思ったんですよ。
難波 そうなんですよね、それわかります。
-- と同時に、「新しいな」とも思いまして。バンドとして過去を引き継いでいるというよりも、前を見て新たに始めた感のほうが強い気がして、それがどの曲からも伝わってくるんですよね。
難波 それはあると思いますね。さっきも話したように、今のハイスタを作ってきたわけだから、絶対に今の自分たちが出ると思うんですよね。レコーディングしたとき、俺も思ったんですよ。「あ、いきなりハイスタだ」って。
横山・恒岡 (笑)。
難波 そこでまたすごいなと思ったんですよ。俺もKen Bandを見てるし、NAMBA69を見てるし、ツネちゃんの活動も見ている。だけどこの3人で合わせると、いきなりハイスタになっちゃうんだなって。
横山 びっくりするよね、やってる本人たちも。3人のケミストリーというのかな。
難波 オリジナリティ、ハンパねえなと思いました。レコーディングには(『GROWING UP』や『ANGRY FIST』を手がけた)ライアン・グリーンに来てもらったんですけど、出てる音はやっぱり今のものなんですよね。
-- メンバー3人とライアン・グリーンという、初期のハイスタを作り上げた人たちが揃って制作したのに、懐メロ的な内容にはならなかったと。
横山 チームに新しい人間も入ってきてますしね。難ちゃんの言ってることの繰り返しになっちゃいますけど、今のハイスタがやっと形になってきたんだなという実感はありましたし、それは当然音にも出ますよね。
恒岡 これはスタジオでもよくみんなで話してたことなんですけど、「90年代と同じようなことをする必要はまったくないよね。今のHi-STANDARDでやりたいことをやればいいんじゃない」って。だから、それがストレートに出ることによって「あ、ハイスタだ」とも「新しい」とも思ってくれる人がたくさんいたら、一番嬉しいですよね。
難波 自分たちがやりたいことをやればよくて、それが「これハイスタじゃないじゃん」とか「変わったね」とかガッカリされても別にいいじゃんと。
恒岡 今この3人で出してる音に、この3人が納得できればそれでいいんです。
難波 うん。と同時に、自分たちがすべてを賭けて録った作品なので、「ガッカリされるわけない」という自信もあったし。
横山 ネガティブな話になりますけど、「こんなのハイスタじゃない」と思う人は一定数いると思うんですよ。でもそれはそれでいいんですよね。そのぶん僕たちは新しいものを得にいけばいいだけの話で。だって、あんなに強烈な活動をしていて、あれだけみんなの生活や思い出に入り込んだ楽曲を送り出したバンドなんだから、新しい楽曲を出されたら、そりゃちょっと戸惑う人もいますよ。でも僕たちはバンドとしてこのHi-STANDARDを続けたいんだったら、新曲は絶対に必要なんです。
難波 で、やるからには聴く人をビビらせたかった。2011年、2012年と僕らは東北に向けてライブをやったけど、日本中はもちろん、世界中にハイスタのファンはいるわけで、そういう人たちにこの音を届けたかったというのはあります。だからこそ、とてつもないものを作りたかったんです。
-- 固定概念じゃないですけど、外から見てる人による「ハイスタらしさ」って限られた楽曲のイメージだと思うんです。この4曲はそういう「ハイスタらしさ」から少しずれるのかもしれないけど、でも紛れもなくハイスタの楽曲なんですよね。
横山 そうですね。「ハイスタらしさ」って話で言えば、僕たちにもそういう部分はあったんですよ。新しいことをやると、どうしても古いほうが良く感じてしまうというか。でもそこを僕たちは作る側だから、突破していかなければならない。それも時間がかかった要因のひとつではありましたね。
-- それと、今作でもうひとつ印象的だったのは歌詞。すごくエモかったです。
難波 確かにエモいっすよね。
-- 皆さんが30代に突入するぐらいでバンドの活動が一度止まったわけじゃないですか。そこから10数年を経た今、Hi-STANDARDというパンクバンドが40代半ばに突入して何を歌うのかというのもすごく気になっていたんです。今のハイスタにおいて、歌詞を通じてどのようなメッセージを伝えていこうと考えてましたか?
横山 今回は僕と難ちゃんで2曲ずつ歌詞を書いたんですけど、たぶん考えてることは近かったので、意外と何の相談もしてなくて。きっと今こういうことを発したいんだろうなというのは、無言でわかってました。でも2人とも、最初はちょっと固くなってるところがあって。で、僕が「TOUCH YOU」の歌詞をふざけて書いたら、ちょっとほぐれたよね。
難波 ああ、そうかもしれない。確かに最初は固くなってるところはありましたね。そこから、Hi-STANDARDの音を待ってる人たち、受け止めたいと思ってる人たちに「僕らもみんなと同じだよ。今こんな世の中に生きていて、いろんな思いをして、いろんなことを乗り越えてきてるんだよ」ってことを届けたいと思った。でもそれは自分に対しても言ってることなのかもしれない。そういうことを、まずはすごく意識したかもしれないなぁ。
横山 「ANOTHER STARTING LINE」にはそれが全部詰まってると思います。震災からの5年間、いや、その前からかもしれないけど、俺たちがバンド活動をストップさせてからどういう気持ちになって、でもそれがあったからこうして今があるんだよっていうのを。
難波 ある瞬間とてつもなく落ち込んでしまうときもあるけど、ある瞬間には「ここからがスタートだ」と思えるときもある。だからこそ「行こうぜ!」って感じですよね。それは強く伝えたかった。
横山 ちょっと脱線しちゃうけど、Hi-STANDARDが「ANOTHER STARTING LINE」って歌うことって、すごく大きいと思うんですよ。人生そんなに新しいスタートってないですもんね。この歌詞は難ちゃんが書いたんですけど、そこをストレートに、なんのてらいもなく言えたなって気がしますね。
難波 でも僕が書いたとはいえ、やっぱりHi-STANDARDとしてのメッセージなので。ハイスタだからこそ言えることもあるんですよ。東北に行くと毎回思うんですけど、困難を乗り越えて頑張ろうとしている人たちがたくさんいるんです。今年は九州も地震で大変だったし、その他にも自然災害でいろんな場所が大変だったじゃないですか。それだけじゃなくて、家でひとりで大変なことになってる子もいるだろうし。そういう子たちも、この曲を聴いて「よし、自分も新たに一歩踏み出そうかな」とか思ってもらえたらいいなと思って。
横山 中学生高校生でも彼ら彼女らなりにものすごく悩んでいるはずだし、そこで「Hi-STANDARDの人たちってどうやって生きてるんだろう?」と興味を持ってくれたら、もしかしたら若い子に響く答えもあるかもしれないですよね。「ああ、なんか生きてればいいこと、あるんだな」とかね(笑)。
難波 そうそう。「生きてりゃいいことあるんだな、オジさんになっても未来があるんだな」って勇気を与えられたら最高だよね。
Vol.02 に続く...
INTERVIEW BY 西廣智一